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by onsa-brother

存在



6年前の今頃、私は、こんなことを考えていた。

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おまえは2㎡の洗面所を領域に そこに居て
そこがおまえの世界の全てだ
大概は 壁と天井の角辺りか、
蛇口附近にいて、
獲物が来るのを待つか水滴を舐めるかして
時間を過ごす
そのおまえのテリトリーを
一時的にでもわたしは占拠して、
わたしがそこに居た証明を
せめてするために、
日々おまえを写真におさめることとしよう
それをおまえが認めるか 許すか否かに関わらず

おまえは蛇口から、洗面台へと ぴょんと跳び、
ささと何処かへ隠れゆく

嵐は過ぎ、
そしてその翌朝の
清々しく晴れ渡った秋の日の
幼稚園の 小さな園庭の片隅で
ひとり立ちつくし、

「だんごムシはどこぉ? だんごムシはどこぉ?」

叫び続ける男の子を
わたしは見る

細い路地の端を歩きながら
ぺっと唾を吐く老婆を
わたしは見る

若い女に抱っこされて、

「おかぁたんは? おかぁたんは?」

泣く童女を
わたしは見る
手をばたつかせるその童女の かあさんは
その子を抱いた
まさに その若い女なのだ

暗く 暗い夜道を 歩いていると
目の前に 青い猫が ぽとりと現れる
猫はわたしを一瞥し みやぁ と一声
一瞬 瞳が輝き その小さな光が
ぽかんと開けたわたしの口に
すっと 飛び込んだ
遠くの空で雷が 音なく ぴかと光った
駅に着くなり突然の どしゃ降り
そんな環境に対する有様を
わたしは見た

単一の 歩調で いつもの 道を 歩きに歩き、
歩数を 十の単位で 繰り返し頭の中で唱え続け、
50m程先を 視点を定めず ぼうっと、
眼球の 視覚補正の機能を 用いずに歩いたら、
道路が 新体操のリボンのように ゆらゆらと
 脈打ち始める  わたしの視界は!

手を洗い、歯を磨き、口を漱ぎ、顔を洗い、拭う
そこで わたしたちは生きる
外を行く人々は!

台風近づく気温13℃の雨の夜、
5㎥の空間には 重く湿った気体
朽ちゆく躰を横たえ、多くのものが同時に
無くなりかけていることに
わたしは気付く

それらは、

シャンプーやハンドソープや歯磨き粉や
米や
コーヒー豆や酒や
キャッシュカードの残高や
コンピュータのハードディスクの容量や
鏡に映る図像や

深夜の無音が ひたひたと
わたしはそれに怯えて やり過ごす術を 探す
この夜を
何が わたしを眠らせるか

おまえは何処へ行ったか?
張った巣の跡形もなく
わたしはおまえがまた、
ぴょこんと現れるのを待って……








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by onsa-brother | 2015-11-20 00:38 | ・雑記